設立趣意書
近年、糖尿病、肥満、高脂血症、高尿酸血症、高血圧さらにはこれらを基盤として進展する動脈硬化、冠状動脈性疾患、腎臓障害、脂肪肝などは、日常の生活習慣の不適切さが問題とされ、国民の健康増進の面からは極めて重要な問題として広く認識されているところである。とりわけ、日常の食習慣の面からの視点は疾患の予防・治療の上から最も関心の高いところである。
糖尿病はそのなかでも、ことに長期にわたる食事制限が必要とされる代表的疾患である。 従来から血糖値のコントロールを目的に、食品交換表を基にした総摂取エネルギーの制限に主眼をおいた食事指導が広く普及し、日本糖尿病学会で推奨している食品交換表は、隠れたベストセラー本となっている。
医師・栄養士にとっても、また自らの食事療法に熱心な患者さん達にとっても、いわば糖尿病食事療法のバイブル的存在である。
しかしながら、「指導されたとおりに、食品交換表を基にきちんと食事療法を行っているが、必ずしもよくならない」と訴える患者さんがいることも、よく経験するところである。
一方、カナダの Jenkins らにより1981年 に提唱された Glycemic Index の概念は、たとえ同じ糖質としての分量の摂取であっても、素材が異なれば血糖値への影響は同様ではないという主張である。カナダ、オーストラリアを中心に進められてきた研究とその成果は、わが国ではごく少数の研究者が注目しただけで20年が経過してきた。遅ればせながら、米国でも近年はその有用性が注目され、NIHもその普及に努めている。
わが国においても、この普及を急がねばならない時期にあると思われる。 そのためには、日本人のためのそして日本食についての Glycemic Index の研究を精力的に進めていかなければならないところである。 海外でも日本食についての関心が高まりつつある今日、同一の視点に立って国際的にもその情報を発信することも求められている。
以上の観点から、わが国における食習慣を中心として、その食材、食品、食事についての Glycemic Index の検討を推進し、その成績を広く知らしめるための研究会の設立は急務と認識する。 これにより、各種の生活習慣病の予防と治療に役立つ情報を食品交換表に加えることにより、国民の健康増進に極めて有益であると思われる。 本研究会設立の主旨にご賛同賜り、多くの方々が本研究会に入会されることを心から希望するところである。
平成14年6月2日
日本Glycemic Index研究会 発起人
田中 照二 聖徳大学杉山 みち子 国立健康・栄養研究所
佐々木 敏 国立健康・栄養研究所
横山 淳一 東京慈恵会医科大学・内科
柳井 一男 東京慈恵会医科大学・栄養部
林 進 東京慈恵会医科大学・栄養部
小山 和作 日赤熊本健康管理センター
若木 陽子 日赤熊本健康管理センター
武藤 正樹 国立長野病院・副院長
田中 征雄 国立長野病院・内科、綜合診療科
鶴見 克則 国立長野病院・栄養管理室
川久保 清 東京大学医学部健康科学部
鄭 珠 東京大学医学部健康科学部
(順不同)